耀龍四間飛車とは
耀龍四間飛車とは、大橋六段が開発して自身の著書で公表している戦法です。具体的には、第1図の後手番のような形をしています。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀 ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v金 ・v飛v銀 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=16 △3二銀 まで
特徴としては、美濃囲いではなく☖7二玉、☖6二金型に構えていることです。美濃囲いや穴熊よりも囲いが浅いため強く戦えないように思われますが、大橋六段は著書の中で下記のようにコメントされています。
現在は「四間飛車といえば美濃囲い」が常識となっています。ただ組みやすいところがある一方で、攻められやすいところがあると感じていました。日々研究を重ねた結果、美濃囲いの王様を2筋(☗2八玉)から3筋(☗3八玉)にずらすだけで、驚くほど勝てる戦法を生み出すことができました。意図を一旦ご理解頂ければ、その後は様々な場面で指しこなしていただけます。
マイナビ将棋BOOKS『耀龍四間飛車』 まえがきより
耀龍四間飛車の狙い
居飛車穴熊対策
耀龍四間飛車は穴熊に対して積極的な仕掛けを狙う作戦です。例えば、第2図のような形に組んで仕掛けを狙います。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・v歩v歩v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ 角 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=40 △4一飛 まで
第2図以下、☗2六角☖6五歩☗6八飛☖6六歩☗同銀☖6五歩☗5七銀☖8五桂(=第3図)と進みます。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ ・v歩 ・v角v歩 ・|三
| ・v歩v歩 ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
|v歩v桂 ・v歩 ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 角 歩|六
| 歩 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・ ・|七
| 香 銀 金 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩
手数=50 △8五桂 まで
第3図は、次に☖9七桂成~☖9六歩のような攻めがありますが、後で☖9一飛の地下鉄飛車の含みも残っています。
左美濃/銀冠対策
左美濃や銀冠には地下鉄飛車と引き角のコンボが有効です。例えば、第5図のような形です。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v金v金v角 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v歩 ・v銀 ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 銀 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ ・|七
| 玉 角 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=1 △4二角 まで
急戦対策
対穴熊には二枚金のコンパクトな囲いにしましたが、対急戦には第6図のように☖3二金とバランス重視に備えます。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金 ・v飛v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=26 △3二金 まで
第6図は後手陣にスキがなく仕掛けづらい形に見えますが、先手がいつまでも仕掛けないと、後手には打開の手段があります。
第7図は先手が仕掛けずに玉を固め続けた局面を見てみましょう。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v金 ・ ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v桂 ・ ・v銀v角v歩 ・|三
|v歩v銀v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 角 金 銀 銀 桂 ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=8 △8一飛 まで
第7図では、
- ☖6三金~☖4二角~☖7五歩というわかりやすい攻め
- ☖6三玉~☖5二玉~2二方面へ
という後手にとってプラスになる手が多い局面です。
みんなの戦型選択
Twitterで耀龍四間飛車にどのような戦型を選ぶかアンケートを取ってみました。結果は以下のとおりです。
ソフトでのシュミレーション
対居飛車穴熊、左美濃、急戦について、それぞれソフトでシミュレーションしてみました。
対局条件
- 使用ソフト:水匠2
- 持ち時間:秒読み5秒
- 対局数:次の3局面について各100局
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v銀 ・v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=36 △8四歩 まで
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v飛 ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v金v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v歩 ・v銀v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 玉 角 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=36 △4一飛 まで
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=24 △8二銀 まで
対局結果
第7図~第9図について、対局の結果を表1にまとめました。

対穴熊の結果
耀龍四間飛車の勝率は15%と低い結果になってしまいました。第7図から、☗3八飛☖4四角☗5九角(=第10図)が代表的な進行でした。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・v歩v歩 ・v銀v角v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ 飛 ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ 角 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=39 ▲5九角 まで
第10図では☖6四歩と突きたくなりますが、☗1五角☖2二飛☗2八飛(第11図)の局面で端攻めができないと判断し、☖8三玉としています。結果的に穴熊と正面から向き合うことになり、堅さ負けしている対局が多かったです。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金v金 ・ ・v飛 ・|二
| ・ ・v桂 ・v歩 ・ ・v歩v歩|三
| ・v歩v歩v歩v銀v角v歩 ・ ・|四
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 角|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=43 ▲2八飛 まで
第11図で☖6五歩は、☗3七角☖6六歩☗同銀☖6五歩に☗5五銀で後手が攻めきるのは容易ではありません。
対左美濃の結果
対左美濃には非常に相性が良い印象です。代表例は先手が銀冠に組み替えた第12図の形です。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉v金v金v角 ・ ・ ・|二
| ・v銀v桂v歩 ・v銀 ・v歩v歩|三
|v歩v歩v歩 ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 角 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=41 ▲8八玉 まで
後手番
☖8一飛と☖4二角が先手陣の急所に利いており、方針がわかりやすくなっています。第12図以下、☖6四歩に☗7九玉と逃げ出しますが、1歩渡すだけで☖8五歩☗同歩☖8六歩があって、強く戦えていませんでした。
対急戦の結果
対急戦はいい勝負のように思っていたのですが、後手の勝率12%と奮わない結果になりました。第9図から☗4六銀☖3二金☗5五歩(=第13図)の進行が一番人気でした。
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=24 △8二銀 まで
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀v玉v金 ・v飛v金 ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=27 ▲5五歩 まで
後手番
第13図から☖4五歩☗同銀☖5四歩☗5六銀☖5二飛と5筋位取りの作戦が先手の勝率に貢献していました。先手はやや持久戦調になったときに、美濃囲いの堅さがないことが得と見ているのかもしれません。
ソフトの対局結果まとめ
対左美濃戦は耀龍四間飛車の良いところが出ましたが、対穴熊や急戦は奮わない結果になってしまいました。耀龍四間飛車は攻め主体の戦法なのでどこかで踏み込んで勝負をする必要がありますが、勝負手という概念のないソフトとの相性が悪かったものと思います。
耀龍四間飛車にとって好都合なデータにはなりませんでしたが、人間同士の対局では方針がわかりやすいことも非常に重要です。事前にしっかりと方針を立てておけば、強い武器になると思います。
参考書籍
耀龍四間飛車は大橋六段の書籍で勉強するのが良いでしょう。