書籍情報
- タイトル:横歩取り勇気流
- 著者:佐々木勇気
- 出版社:浅川書房
- 発行:2020年5月
目次
- まえがき
- プロローグ
- 第1章 互いに譲れない変化 ☖8二飛~☖2二銀型
- 第2章 持久戦から作戦勝ちへ 21手目☗3五飛
- 第3章 中段飛車の戦い方 ☖2三銀~☖3四歩型
- 第4章 飛車角交換の攻防 ☖3三金型
- 第5章 気になる変化のその先 ☖2七角型
- 第6章 手得から具体的な良さへ ☖8五飛型
- 第7章 飛車のぶつけ、飛車の転回 ☖7六飛型
- 第8章 後手積極策への対応 ☖5二玉~☖7四歩型
- 第9章 新しい感覚と力戦 ☖6二玉型
- 第10章 定跡と力戦の総合型 ☖7六飛~☖8六飛型
- あとがきに代えて
内容
横歩取り勇気流の本家による定跡書です。妥協のない勇気流の変化が解説されていますが、まえがきだけで本書の雰囲気が伝わってきます。
公式戦だけでなくVSや研究会で指した将棋も同等の重きを置いたことは本書の大きな特徴です。このとき大きく役に立ったのが当時の棋譜ノートでした。何冊にも増えたノートの中から、大量の変化や感想戦のメモ等、頭の中に入っていた研究を整理することで出来上がったのが本書です。登場していただいた棋士の皆さまには、この場をお借りして深く感謝いたします。妥協なく書いたので内容は高度かもしれませんが、将棋の奥深さを味わって頂けると幸いです。いいところで図面にしたつもりなので、難しいなと感じる方は、映画のワンシーンを見るような気持ちで楽しんでください。対局中の揺れ動く気持ちなども素直に載せました。奨励会員や強くなりたい方はこの本を読破し、役立ててください。
まえがきより
横歩取り勇気流とは
第1図はお互いに飛車先の歩を交換したところ。ここで☗3四飛(=第2図)と取るのが横歩取りと呼ばれる戦型です。
第2図は後手の分岐点で、
- ☖8八角成☗同銀☖7六飛とする『相横歩取り』
- ☖3三桂とする『☖3三桂戦法』
- ☖3三角とする『☖3三角戦法』
が有名なところです。③の☖3三角が一番人気で、勇気流もこの変化に含まれています。
第2図以下、☖3三角に☗3六飛と引くのが最も多い指し方ですが、☗6八玉(=基本図)と指すのが勇気流です。
横歩取り勇気流では、基本図からの攻防が非常に細かく解説されています。プロの実戦だけでなく、研究会で現れた変化なども詳しく解説してあり、非常にボリュームが多いです。
勇気流の特徴
勇気流の特徴は以下の点にあります。
- 右辺での攻めの構築が早い
- ☗6八玉型が右辺の戦場から遠い
例えば、第3図のように、☗3六歩~☗3七桂を急ぐことによっていち早く攻めの体制を整えることができます。
第3図では先手は☗8三歩☖同飛☗4五桂の攻めを狙っています。したがって、これを防ぐために☖8八角成☗同銀☖3三銀と応じて戦いが広がっていきます。
このような順に進んだときに、3筋周辺から玉が遠いので右辺での攻め合いには強気に出られるのがメリットです。
勝手にレビュー&ランク付け
解説・読みやすさ | 4.0 |
難易度 | 5.0 |
レイアウト | 3.5 |
対象 | 有段向け |
総合 | 4.0 |
最善を追求する内容になっており、非常に難易度が高いです。個人的には横歩取りを指す方は買い一択の名著だと思いますが、最後までたどり着かずに挫折する方は多いかもしれません。細かい変化を追うよりも、読み物として目を通して流れだけ把握しておくだけでも良いと思います。
また、将棋の本のレイアウトではやや珍しい部類に入るので、目が慣れるまでは読みづらさがあるかもしれません。途中図が多いので助かりますが、ページを跨ぐことも多いので将来的に電子書籍化した場合にはちょっと見づらい可能性があります。
なお、あとがきに代えて藤井聡太四段(当時)戦の自戦記があります。この対局は取材を殆ど断ったと書かれているので、貴重な内容になっていると思います。